宇品波止場公園を歴史さんぽ 旧国鉄宇品線周辺編

日々刻々と姿を変える街並み。その中に残る歴史の痕跡をたどりながら、今の町の成り立ちに思いをはせる「広島のいまとむかし」。
今回はかつて広島市南区を走っていた国鉄宇品線の廃線跡をたどってみたいと思います。

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1986年まで走っていた
宇品線沿革

宇品線は1894年(明治27年)から1986年(昭和61年)まで92年間に渡って広島駅と広島の海の玄関・宇品を繋いだ鉄道路線です。

元々軍事専用線として兵員や物資の輸送を目的に敷設され、終戦後は通勤・通学および貨物輸送に利用されていましたが、旅客輸送は1972年(昭和47年)を最後に廃止され、最末期は通運業者専用に一日1往復の貨物列車が運行されるだけになっていました。

宇品駅周辺の今と昔

まずは宇品線の終着駅・宇品駅の場所を確認してみましょう。

※この地図は、時系列地形図閲覧サイト
「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)により作成したものです。

左が1950年(昭和25年)の宇品周辺、右が2020年現在の同じ場所の地図です。この時の宇品駅は現在の広島競輪場正面入場門の辺りにあったことが分かります。ここから海岸通りに沿って線路は東から北へ向かいます。

海に向かって突き出しているのが「六管桟橋(陸軍桟橋)」と呼ばれた桟橋で、戦前はここから戦地へ向けて兵員や物資が送り出されていきました。現在は「宇品波止場公園」として整備されています。

石碑の真後ろに宇品線の線路が残されています。ただしこれは移設されたもので、実際の線路はここにはありませんでした。

宇品波止場公園に隣接する形で「宇品デポルトピア」という商業施設が整備されています。この一帯は港に積み下ろしする荷物を集積する倉庫が立ち並んでいた場所で、その跡地を利用した施設です。

港としての機能も維持されており、公園の東側は宇品外貿第5バース、通称「1万トンバース」として世界の客船が寄港しています。夏には花火大会の会場にもなり、多くの人で賑わいます。

宇品波止場公園で一際目を引くのが「パラダイスの塔」です。

これは1989年(平成元年)に広島で開催された「海と島の博覧会」、通称海島博のモニュメントを移設してきたものです。夜はライトアップされますが、本当の見どころは外観ではなくその中にあります。

塔内部の床には「ルミナスストーン」という蓄光石が敷き詰められており、夜には足元に星空が現れたような美しい光景を見ることができます。これに加えて夜は宇品大橋などの夜景を楽しむこともでき、デートスポットとしても人気があります。

護岸は公園として整備されており、ファミリーで釣りを楽しむ人も多く訪れます。

海へ少し張り出している箇所に六管桟橋のモニュメントが設置されています。

見に行ける歴史の痕跡

宇品波止場公園から少し北側、広島高速宇品インター付近にレンガの壁だけが残されています。これは陸軍糧秣支廠倉庫の遺構で、戦地へ送る兵隊の食料や軍馬の飼料が保管されていました。

運び込まれる食料は宇品線で送られてきます。壁の左側にあるモニュメントの写真には在りし日の糧秣支廠倉庫の前にしっかりと線路が確認できます。

糧秣支廠倉庫跡の前は広島高速および広島南道路が東西に伸びています。恐らくこの辺りに線路が敷かれていたのでしょう。

反対側に目を向けてみます。海岸通りを北向きに進むと、「しもたんな」の駅標のレプリカがあります。

ここには1934年(昭和9年)から1943年(昭和18年)までの9年間だけ「下丹那駅」があったそうです。近隣の紡績工場のために設置されましたが、戦時中の燃料事情により駅は休止され、その後復活することはありませんでした。

下丹那駅跡のある海岸通りは宇品線の線路跡に沿って走っている道路です。北から向かうと1万トンバースの手前で西へ曲がりそこから海に面しているので「海岸通り」かと思っていたのですが、1950年の宇品周辺の地図を見ると違う理由が見えてきます。

※この地図は、時系列地形図閲覧サイト
「今昔マップ on the web」((C)谷 謙二)により作成したものです。

海岸通りから東側、現在の宇品東4丁目や仁保沖町はまだ埋め立てられておらず、文字通り海岸線に沿って宇品線は敷設されています。宇品全体が1884年(明治17年)から造成された大規模な埋立地であり、海岸通りは埋立地を仕切るための東側の堤防だったのです。

左側の地図では出島もこれから埋め立てをはじめるための堤防だけがあり、現在の広島港宇品旅客ターミナルの辺りもまだ海の中です。元宇品の東側に「広島港」の文字があり、宇品線の宇品駅周辺が港の中心であったことが伺えます。

私たちは
歴史の上で生きている

今は新しい商業施設、きらびやかなモニュメント、大規模な港湾施設が並ぶ宇品波止場公園周辺。

そこにはかつて鉄道が走り、多くの兵隊を送り出してきた港があり、現在の宇品地域全体を形作った痕跡がありました。

自分の住んでいる足元の歴史を見つめなおすと、今の暮らしも少しだけ違った景色になるかもしれません。あなたも自分の住む街の「いまとむかし」を少し覗いてみませんか?

今回紹介した場所
(GoogleMap)

※近隣にご訪問の際は、周囲の方への配慮をお願いいたします。

  • 路上駐車をしない(宇品波止場公園入口にコインパーキング有)
  • ゴミは放置せず持ち帰る(宇品波止場公園にゴミ箱はありません)
  • マスクの着用など感染症防止対策を行い、大人数での訪問を避ける

宇品線

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