いつも私のそばに大切な人へ
美しい手書き文字“カリグラフィー” を

いつみてもその人らしくいて、一緒に過ごしていると心が落ち着く…。素敵なあの人はどんなふうに暮らしてる? シリーズ「あの人に会いにいく」では、広島で暮らしのてまひまを楽しむ“素敵なあの人”に会いに行きます。今回はカリグラファーの二宮郁子さん。アルファベットの26文字が編み出す美しい表現に触れてきました。

こつこつ追求型の方にオススメ
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ゲスト:二宮郁子さん

1995年、カリグラフィーに出会い、学び始める。カナダに留学し、マーティン・ジャクソン氏に師事。帰国後、アートスクールでのカリグラフィー講師を経て、2005年に独立。東広島市にあるアトリエ「NINOGRA(ニノグラ)」で制作活動やレッスンを行う。

HP

美しさと機能性を
両立させた手書き文字

カリグラフィー=Calligraphyとは、ギリシャ語でCALLI(美しい)とGRAPHEIN(書くこと)を語源とする、アルファベットを使った書道のようなもの。アルファベットの歴史は約2000年以上にさかのぼり、公文書、経典などを美しく残すために始まり、特に欧米の修道士の聖書の写経用に発達したものだそうです。

より速く、かつ美しく記録を残すために開発された数々の書体は、現代ではアートやデザインへの可能性も広げています。美しい姿の背景に、効率化の一面があったことに驚かされました。美しさと効率が両立するなんて! 素敵ですね。

郁子さんがカリグラフィーと出会ったのは25年前。学生のころから英語が大好きで、英語を学ぶ中でアルファベットを扱うカリグラフィーに出会います。「もっと知りたい!」という思いを抑えることはできず、カナダへ留学。カナダ在住の英国人で世界的に有名なカリグラファー、マーティン・ジャクソン氏に師事しました。帰国後は、国内だけでなく海外のコンテストなど世界をフィールドに作品を発表し、入選。独自の表現は国内外で高く評価されています。それらの作品は個展の準備のために手元にあまりなかったのですが、郁子さんのホームページで見ることができます。

ツバメのように
自由にのびのびと

東広島市の高台にある郁子さんのアトリエ「NINOGRA(ニノグラ)」。三角屋根が目印です。この日はたまたま、掘ったばかりだというサツマイモが中庭に干してありました。のどかな風景に癒やされます。

軒下にはツバメのための巣箱がいくつもあり、中庭にはツバメがとまっていられるようにロープが張ってあります。ツバメの子育てや生活を間近で眺めるのが楽しみなのだそう。「ツバメの飛翔を見るのが大好きなんです。ツバメのように、私の文字も自由でありたい」と郁子さん。

ツバメが来るようになって7年、自然の営みを優しく描いた詩を作品のモチーフにすることが増えたそうです。制作は、その詩の世界感を表現するのにふさわしい書体を選んでアレンジを加えたり、全く新しい書体でアルファベット26文字を作って仕上げていきます。

アトリエにはツバメのグッズがたくさん。制作する机にも、郁子さんがフェルトで作ったツバメがいました。ツバメに見守られながら制作スタート。紙の上でペンが意思を持っているかのように走り出します。紙の上には朱色で「Merry Christmas」の文字。白い紙が一気にクリスマスムードをまといます。

「どうぞ」と手渡された時、子供のころにクリスマスプレゼントをもらった時のようなうれしさに包まれました。「手書き文字には、書き手の思いや温もりが宿っていると思うんです。手書き文字がそばにあると優しい気持ちになれるような気がするんです」と話してくれました。

カリグラフィーの
楽しみ方は3つ

郁子さんが提案するカリグラフィーの楽しみ方は主に3つ。

まず一つは、アートとして楽しむ。心に強く働きかけてくる言葉や詩を、自分の感性で表現することです。郁子さんの最近のお気に入りは、16、17世紀ごろのネーデルランドの文字だといわれる「フレミッシュ体」。独学で読解し作品に取り入れています。まるでツバメが飛び回っているかのようなのびのびとした線が印象的です。

2つめはデザインとして楽しむ。「カリグラフィーの書体は数えきれないほどたくさんあります。本来の書体の形を尊重しながら、手書きにしかできない自由自在な文字デザインを試みています」。文字の中にイラストを組み込んだり、文字だけで図柄を描いたりと独創的です。

3つめは、クラフトとして楽しむ。郁子さんは紙、革、布などさまざまな素材に、カリグラフィーを活版印刷やシルク印刷、レトロ印刷といった多様な方法で印刷しています。ペンケースに印刷してあるのは「人生は実験みたいなものだ。だからいろいろと経験したほうがいい!」というメッセージ。"大切な道具と大切な言葉をいつも持ち歩きたい、飾りたい"をテーマに、新しいものづくりを楽しんでいるそうです。

郁子さんのてまひま

クリスマスの演出に、手書きの文字のひとてまはいかがでしょうか。「最近は、インターネットや書籍などでたくさんの書体が紹介されています。まずは、それを専用のペンで模写して、絵を描くような感覚で自分なりに楽しみながら書いてみてはいかがでしょうか」と郁子さん。見せていただいたのは、手作りのクリスマスカード。紙の選択一つで表情は一変します。手書き文字をコピーやシルク印刷をして、封筒やポチ袋にしたものも。お年玉袋にいいかも!と思いつき、ワクワクしてきました。「著作権などには十分に気を付けて。正しく理解することから、楽しみは無限大に広がりますよ」とアドバイスしてくれました。

まずはクリスマスに、あなたの気持ちを託した手書き文字を贈ってみませんか。

あの人に会いにいく

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