建築家 谷尻誠さんトークショーレポート。「どうやったらできるかを考えることが大事」

建築家で起業家としても活躍する谷尻誠さん。10月24日、山根木材創業110周年を記念した講演会「谷尻誠が考える家具と建築の話」が同社インテリアショールーム「デジマストック」で開催されました。
谷尻さんの仕事観がたっぷりと紹介された1時間半。今の自分に必要なことを考え、できる方法を見つけて未来につなげていく生き方は、自分のことが後回しになりがちな私たちに役立つヒントが盛りだくさん。その一部を紹介します。

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建築家・起業家:谷尻誠 たにじり まこと 

SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役。
1974年、広島県三次市生まれ。広島・東京の2カ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設まで国内外合わせ多数のプロジェクトを手がけるかたわら、穴吹デザイン専門学校特任講師、広島女学院大学客員教授、大阪芸術大学准教授なども務める。
近年オープンの「BIRD BATH&KIOSK」のほか、「社食堂」や「絶景不動産」「21世紀工務店」「tecture」「CAMP.TECTS」「社外取締役」「toha」をはじめとする多分野で開業、活動の幅を広げる。

何もないから考える、
あえて不利な立場に立つ

広島県三次市に生まれ、中庭や五右衛門風呂のある町家で成長したという谷尻さん。「いろんなものがそろっていない。遊び道具も遊び方も自分で考えなければならない。田舎で育ったからこそ、自分で考えるということが芽生えた」と言います。

中学生でバスケットボールを始め、部活に没頭。バスケットプレーヤーとしては身長面で不利と考え、3ポイントシュートに活路を見出します。しかし、試合では相手がいるので3ポイントシュートを打たせてもらえず、さらに1メートル外側から打つことに。誰にも邪魔されずシュートを打つことができ、チームも勝ち進んでいったそうです。

「バスケットボールでは身長が高くてゴールに近い方が有利だという常識的に理解されていることを、むしろ不利だと思える1メートル離れるという場所を選ぶと圧倒的優位性を手に入れました。設計の仕事で誰かと比べると自分が不利だったりすることは多々ありますが、少し離れてみると別のやり方が見えてきます」。

人生を変える本と出会う

谷尻さんのこれまでを振り返ったとき、進むべき方法を示してくれたかのような本との出会いがあったようです。

漫画「ツルモク独身寮」(著/窪之内英策)でインテリアデザイナーという職業を知り、体育大学への推薦を断ってデザイン専門学校へ進学。谷尻さんの興味は洋服から家具、インテリアデザイナー、そして建築へと広がっていきました。卒業後は、建売住宅を専門とする設計事務所に就職。目の前の仕事をこなす忙しい日々を送ります。さらにクリエイティブな仕事を求めて、設計事務所を辞めて就職活動をするも思い通りに事は進みません。それなら好きなことに時間を使おうと、2000年26歳でサポーズデザインオフィスを設立。仕事がなく、誰かが店をするという噂を聞いては勝手に設計して無理やり仕事。徐々に、設計が楽しくなり始めたそうです。

そんな時に出会った本が、「はじめて考えるときのように」(文/野矢茂樹)。「わかるための哲学的道案内」という副題がついています。この本を読んで、「自分は言われたことを何となくセンス良さげにつくっているだけで、飲食店とはどういうものかという根源的なことまで考えてはいない。もっと深堀りして物事を捉らえて空間をつくれるようにならければ、未来はないのではないか」と仕事との向き合い方が変わったとのこと。その変化が、2011年から広島事務所の3階で始めたトークプロジェクト「シンク」の運営にもつながります。

ホームページで「歌を歌った日はライブハウス、食事をした日はレストラン、また作品を展示すればギャラリー、落語をすれば寄席と、行為で空間に名前を付けていきながら、最低限何かがあれば、その部屋に名前が付くのかを知ることで、設計をしていく上で非常に重要な部分を抽出できるようになるためでもあった」と語っています。

社会の変化に合わせて、
今必要なことは
何かを考える

Photo by Toshiyuki Yano

Photo by Toshiyuki Yano

サポーズデザインオフィスを設立して20年、これまでを振り返って、「インターネットやSNS、iPhoneの普及、AIの発達など、価値観は変化している。建築の世界にいる僕たちも、自分たちが何をすべきかを考える必要があると思った」と話します。そうしてたどり着いたのが「プロジェクトをつくりだす」こと。

谷尻さんが手がけた広島県尾道市の「OnomichiU2(オノミチユーツー)」は、古い物流倉庫の中にホテルやショップ、レストランなどを集めた複合施設。「尾道の風景を倉庫の中に引き込みました。通常の仕事はそこで何をするかが決まっていて、それを実現するために設計事務所に依頼があります。僕たちはこの場所で何をするかを企画しながら、それを設計していきました」。こうした実績を重ねて“提案する事務所”として認知が高まっていきました。

できない理由よりも、
どうやったらできるかを
考える

やりたいことをやろうとしたとき、お金がない、時間がない、人脈がないからできないなど、できない理由がたくさん浮かんできます。谷尻さんが4年前に法人化した「21世紀工務店」は、できないことをできるように考えるために立ち上げた工務店。家具も同様に、トライして作っていける家具製作会社「未来創作所」を始めました。気が付けば立ち上げた会社は10社に。「不動産が扱えて、空間を企画できて設計・施工できて、家具もつくれて運営ができれば、自分たちで仕事をつくっていけるだろう。そんなことができる会社になろうと思ったんです」。

トークイベントの後、谷尻さんに率直に聞いてみました。「どうしてそんなに次々と新しいことができるのですか」。すると「思いついたアイデアに価値はない、それを実現してこそ価値があると思っています。実現するためには、力になってくれそうな人を見つけて、力を貸してもらいます。行動あるのみですよ!」と話してくれました。未来への漠然とした不安を吹き飛ばしてくれる心強い言葉です。

最後に、トークショーの中で印象に残った言葉を紹介します。「できないことを考えるのではなくて、どうやったらできるかを考えることが大事」。別の視点を持つことで、思わぬ解決策が見つかりそうな予感がしてワクワク。あれやこれやと考えてみたくなりました。

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