自然の移り行きに気付くことで日々が豊かに。そして自分の気持ちに正直に

いつみてもその人らしくいて、一緒に過ごしていると心が落ち着く…。素敵なあの人はどんなふうに暮らしてる?シリーズ「あの人に会いにいく」では、広島で暮らしのてまひまを楽しむ“素敵なあの人”に会いに行きます。今回は、宮島にある老舗旅館「みやじまの宿 岩惣(いわそう)」の女将、岩村玉希さん。玉希さんと話していると優しい空気に包まれます。肌で感じる心地よさの源泉を探ってきました。

こつこつ追求型の方にオススメ

ゲスト:岩村玉希さん

「みやじまの宿 岩惣」の女将を2007年から務める。7代目。体を動かすことが好きで、お客様と一緒に弥山に登ることも。趣味はカメラで、宮島の美しい日々を写真に収めている。広島市出身。

みやじまの宿 岩惣HP

宮島さんぽの目的地になる
老舗旅館「岩惣」

宮島口からフェリーに乗ると、時間の流れが瀬戸内海の穏やかな波のようにゆったりとしてきます。この日の目的地は、紅葉谷公園の入口に静かにたたずむ創業167年の歴史を持つ老舗旅館「岩惣」。若葉が目覚めた若々しい景色の中に、桜色の着物の女性の笑顔がありました。7代目女将、岩村玉希さんです。

岩惣の始まりは1854年の江戸時代終わり、初代の岩国屋惣兵衛さんが始めた茶屋です。当時の谷に橋を架け、渓流に茶屋を設け、道行く人の憩いの場としてつくったそうです。旅館の形となったのは明治時代から。初代内閣総理大臣の伊藤博文など数々の著名人が宿泊し、4代目女将は今でこそ誰もが知るもみじ饅頭の考案者と聞いて、ますます驚きました。


明治時代の面影を残す本館、そして新館、少し歩いた場所には山の傾斜にそって離れが点在しています。離れは大正時代から平成時代にかけて造られたもので、一つひとつ趣が異なります。それぞれの建物に囲いのようなものがなく、公園に溶け込むように、宮島の自然と一体化するように岩惣はあります。

宮島はどの季節も、
雨の日も美しい

「国立公園の中にある旅館ですから、自然のひそかな移り行きを楽しんでいただきたいですね。宮島はどの季節でも、どの天気でもいいんです」と玉希さん。山肌を染める桜、においたつような新緑、ふかふかの紅葉の絨毯、静かな雪景色と、季節ごとの美しさを話してくれました。


強いてあげるなら、おすすめの季節は?と聞くと、「新緑です!」とのこと。谷に雨が静かに降り続くと、もみじの葉が一層青々としてきます。岩惣の窓でトリミングされた景色は室内に取り入れられ、料理にも写し取られます。

「素晴らしい景色に日々出会えるのは、自然がそのまま残されている宮島ならでは。季節の移ろいが何気ない毎日を特別な日にしてくれます」。雨の日も薄曇りの日も、それぞれの様子に風情を楽しませてくれる宮島。その懐の深さが、いつ訪れても楽しい宮島滞在の心地よさにつながっているのかもしれません。


日々の小さな変化に気付くことで、日々の楽しみがぐっと増えます。もうすぐ新緑の季節、雨の日の岩惣も訪ねみたいという楽しみができました。

手をかける、
感じて察してもてなす

「岩惣には本物がたくさん残っているので、皆さんにぜひ体験してほしい」。玉希さんに案内されて本館へ。玄関は明治25年、ロビーは昭和56年つくり。檜皮の吹き替え、漆の塗り替えなど、専門の職人が手を入れながら使い続けられています。館内を奥に進むと、宮島と岩惣の歴史を重ねながら時代の流れを見ることができる写真の展示、岩惣の美意識を物語る美術品もあります。

季節に合わせて美術品や調度品を取り合わせるのも玉希さんの仕事です。思わず見入っていると、少し先で玉希さんが静かに待ってくれていました。岩惣の包まれるような心地よさの源泉を見つけたような気がしました。

玉希さんにおもてなしの心構えを聞いたところ、「出すぎず放っておきすぎず」とのこと。その人が発する空気を感じて、何を求めているか察することを心掛けているそうです。

「外国のお客様は要望をはっきりおっしゃいますが、日本のお客様は時に遠慮されている場合があります。どんな方だろう、何がお好きだろう、どんなかかわり方が心地いいだろうかと考えながら、お客様と対面させていただいています」。

そんな玉希さんが大事にしている言葉は「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」。「皆さんから恩をたくさんいただいています。そのことに気付けるように、アンテナを張っておきたいと思っています」。すぐにメモしました。

玉希さんのてまひま

旅館の女将という休みのない仕事と、子育てや家庭を両立させるのは大変なのでは?と勝手に心配。すると「忙しいと言っても仕方ないですよね。仕事も家庭もあるのは皆さんと同じですから。それなら、限られた時間をどう使うか、どうしようかなと考えます」。

そして「その時に食べたいものを食べる。おいしいものを食べると元気になれますよね!」と笑い声とともに返ってきました。自分の体の声を聞く、つまり自分の気持ちに正直になって気持ちを少しずつ前に進めていきましょう、そんなエールを受け取りました。

さて、今日は何を食べようかな。私の体に聞いてみようと思います。

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