デニムのように軽やかに。走り出したからこそ見える景色がある。

広島県福山市はデニム生地の生産量日本一。国産デニムの7割が福山で作られているそうです。「福山デニムをもっと多くの人に知ってほしい」と話すのは創業100年を超える老舗企業、篠原テキスタイルの篠原由起さん。会社入り口にあるショップには、デニム生地とともに、靴下やニット帽、手袋なども並びます。どれもデニムが作られる工程で出る端材が原料と聞いて驚きました。今回の「あの人に会いにいく」は、由起さんにデニムの新しい可能性を教えていただきます。

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ゲスト:篠原由起さん

大学卒業後は紡績会社に就職し、機械整備、商品開発などさまざまな仕事を経験。綿から始まるものづくりを幅広く学び、その知識と経験を携えて家業の篠原テキスタイル株式会社に入社。新規事業開発リーダー。休みの日は家で家族とゆっくり過ごすことが好き。

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日本一の技術をいかして
未来のためにできること

篠原テキスタイルは1907年、かすり製造業として創業した老舗企業です。備後絣から藍染の織物へ、現在はデニム生地製造に特化しています。時代の変化とともに求められるニーズの変化に応えながら、「織り」の技術を追求してきました。

子どものころ、製造工場が遊び場だったという由起さん。大学卒業後は大阪の紡績工場に就職し、跡を継いでほしいとははっきり言われなかったものの、家業を継ぐため福山に帰ってきました。

由起さんが入社して強く感じたのは、福山がデニム生産量日本一ということが地元でもあまり知られていないことでした。

ジャパンデニムといえば、岡山県井原市や倉敷市が思い浮かぶ人が多いかもしれません。これらの都市ではニーズの多様化や個性化が求められるようになった時代の流れをつかんで、独自ブランドを立ち上げ、その品質と特徴を世に発信してきました。一方、福山市の場合は、裏方である素材メーカーや加工技術屋が多く、国内外の高級ブランドの製造を行っていながら、作り手である福山の製造企業が表に出ることがあまりなかったのです。

そこで由起さんは「新規事業開発リーダー」という肩書きで、福山デニムを地元の人に知ってもらうにはどうすればいいか、デニム生地を使って何ができるかを考えていきました。

当たり前の中に
負けない強みを発見

そもそも、なぜ福山デニムが世界から選ばれたのでしょうか。その秘密は、デニム関連企業が集まっていることと多様性にあります。糸を染める、生地をつくる、洗い加工、縫製、刺繍、特殊加工といった工程ごとに専門の企業や職人がいて、各々で磨きをかけてきました。だからこそ、常に高い品質の製品を安定的に提供し続けることができるのです。

「当たり前にやってきたことこそ、福山デニムの強み。これをもっと発信していこう」と考えた由起さんは、地元縫製工場さんとともに、「100%福山品質」を掲げたデニムづくりに取り組みました。それが「F.F.G(福山・ファクトリー・ギルド)」。篠原テキスタイルを含む地元の繊維業者7社が協力して1つのデニムを完成させるものです。

引用:ⒸFUKUYAMA CITY FC

また、福山のサッカーチーム「福山シティFC」に、同社製造のストレッチデニムを使ったオフィシャル移動着を提案。今年の秋の一般販売に向けて準備を進めています。福山デニムの登場場面を増やしています。

思いついたら
つながって広げていく

そのほかにも、驚きのあるアプローチでデニムの魅力を伝えています。福山に滞在して生地を作るところからかかわるフルオーダージーンズは、福山デニムの製造工程を職人から学び、実践し、職人の技を体感します。手に入れるのはジーンズだけでなく、福山での多くの体験と発見。

「今、服の買い方が変わってきています。誰がどのような思いをもって作っているのか、作り手に注目が集まっています。そういった洋服選びの選択肢に福山産であることも加えてほしい。そして、洋服選びにもっとワクワクしてほしいです」

F.F.G、サッカーチームとのコラボ、フルオーダージーンズ、オンラインでの工場見学など、次々と新しいプロジェクトを立ち上げる由起さん。好奇心の源泉や原動力は?「思いついたら始めてみます。そして公に発表して、やらざるを得ない状況をつくります (笑)」とのこと。それを実現するための力になるのは、業種を超えた人脈。「福山で面白いことをしようとしたとき、篠原に言ってみようと言っていただけるようになりたい」。つながりと由起さんのアイデアが結びつき、デニムの可能性が広がっていきます。

新しいことを始めるとき、何かにチャレンジするとき、まずはスタートしてみる。走り出したからこそ見えてくる景色があり、実現への道も徐々にはっきりとしてくるのかもしれません。

由起さんのてまひま

取材時、由起さんが履いている靴下に目がとまりました。詳しくお聞きすると、篠原テキスタイルと地元企業のコラボで生まれたオリジナル雑貨ブランド「SHINOTEX(シノテックス)」のものでした。ソックスの素材は、デニムの生産過程で生まれる残糸と呼ばれる糸や、廃棄されることになった布を糸に作りなおしたアップサイクルの糸です。廃棄物の減少を目的としています。通常のソックスに使われる糸よりも太く、そのふくらみをいかしたまま柔らかく編み上げてあるのでクッション性があります。履き心地やわらかで通気性がいいため、長時間履き続けていてもストレスが少ないのが特徴です。

靴下を履くと、その心地よさと、アップサイクルというライフスタイルを取り入れた自分に大満足。新しい自分にさせてくれた靴下を、応援したいあの人に贈りたいなと思います。

会社名 篠原テキスタイル株式会社
住所 〒720-1134
広島県福山市駅家町中島703
連絡先 084-976-1511(代表)
サイト https://www.shinotex.jp
F.F.G https://ffg-2018.com
福山シティFC https://fukuyama-city.com

あの人に会いにいく

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